interviewer:Madoka Tomosaki
──他の監督で好きな方はいらっしゃいますか?
キム・テギュン監督と何本かやってきたんですけど、彼は大作と、ちっちゃな規模の『クロッシング』とか『裸⾜の夢』の、ホントに伝えたい作品の両⽅やれるってとこが、自分としては学ぶことが多かったですね。
ホントに人が大好きな、そういう部分も勉強になったし、尊敬出来ましたね。歳を取っても挑戦して⾏くって いう精神が良かったですね。 あと、キム・キドク監督とも『悲夢(ヒム)』っていう、イ・ナヨンさんとオダギリ・ジョーさんが出演した映画で自分は演出部だったんですけど、 監督はプロデューサー兼監督だったので、全体的なお金のことも考えながら作品を作るって⾔う部分では、勉強になりました。
とにかく彼も人をまとめる力がすごくあって、ああ見えてすごく優しい⼈で、スタッフの⼀番下の子に対しても敬語で喋るような。そう言う魅⼒があるから皆が集まって来るし、皆の力を借りつつ独特で誰にも真似できない映画作りが、すごく印象的でしたね。


──どんな⽅なんだろうと思って。1 日に3本観た時になんか…
疲れませんでした?
──すごい疲れました。(笑) すごくグッタリしましたけど、⾯白い感じになりましたね。
監督は今色々あって韓国では作品を撮ってないんですけど、代わりに別の国で撮影もしてるんですよ。いつ かまた⽇本でも観れる⽇が来ると思いますけど。
──えー、楽しみ。 藤本さんが実際に韓国で、韓国映画のお仕事に携わって思う韓国映画の魅⼒はどういうところですか?
映画ってどの国でもストーリーの⾯白さはしっかりあると思うんです。韓国映画にプラスであるのは、⾒映えする絵、だと思いますよ。それはちゃんとお金をかけて凄いカメラワークだったり、絵の大きさや広さだったり、エキストラの規模だったり、照明に時間をかけていたりとか色んな見映えの部分に 於いて妥協せずにしっかり見せてくれているってところが韓国映画の魅⼒だと思いますね。
ま、ストーリーが良い場合って最後まで観て、あーメッチャ感動した、とか、最後になってようやく分かると思うんですけど、⾒映えってやっぱり最初からストーリーが見えていないとしても、何か絵的に⾯白そう、飽きない絵、魅⼒的な絵っていうのが韓国映画にあるから皆を魅了するのかな、って思うんです。
──私もそう思いますね。 絵がやっぱりカッコイイ。やっぱり妥協を許してないなって。⽇本語がわからなくなった(笑) そういう韓国映画が私も⼤好きです。
自分も韓国映画を観て、ここまでやるのかってすごい絵作りだな、ってずっと感⼼させられるから、どんどん前を⾏行っているっていうか、さらなる欲を出して絵作りをしているってところがホント尊敬するな、と思い ますね。
── 一つ一つの絵がカッコイイですよね。どうやって撮影してるんだろう、って思うシーンが沢⼭ありますし、時間かけて撮ってるんだなって思います。
時間をすごくかけていて、撮影期間が平均3ヶ⽉くらい。
──1本の映画で?
1本。だからそれだけ役者さんも役作りができる。それだけ演技するための集中できる時間がある。監督も悩める時間があるし、スタッフとディスカッションする時間もある。それぞれの現場スタッフも自分たちのパートの役割をしっかりと十分に準備して作り上げる時間があるっていうところが、やっぱり絵にしっかり現れている。
ジッと最後まで見てしまう絵作りに繋がっていると思います。羨ましいですよね。
──羨ましいですね。そこまで皆で準備して臨めるっていうことが、すごく良いなって思います。
あと、期間が長ければ長い程スタッフ同士、役者同⼠、スタッフや監督とコミュニケーションをとる時間が長くなるってことでお互いの信頼関係にも繋がって、良い化学反応が出来ているんだと思いました。
韓国映画のアカデミー賞受賞について
──良いですね。 話変わるんですけど、韓国映画がアカデミー賞を獲りましたけど、それは当然の結果と思われますか?
ま、当然だとは正直思わない。もちろん嬉しいけど予想もしてなかったから当然ではないと思うんですけ ど、注目して貰えてすごく嬉しいですし、ホント世界に向けて絵作りをずっとして来たと思うのでそれが認められたって事は、今までやって来たことが間違ってなかったってことが証明されて、ホント嬉しいですね。
本当はコロナ禍でその流れがちょっと途切れたかなって不安は少しあるんですけど、普通だったら『パラサイト』が賞を獲りました、はい韓国映画どんどん世界へ出て行けってなったら良かったんですけど、世界中の
映画館が閉まっていたりしてちょっと途切れたかも知れませんね。でも『パラサイト』によって他の韓国映画も注目されたら嬉しいですよね。
──はい。私も配信で映画を⾒るんですけど、『パラサイト』がアカデミー賞を取ってから上位に韓国映画が多いで す。韓国ドラマに関してもランキングに入っているのがほぼ韓国ドラマっていうのが凄いなって。ストーリー も⾯白いですし、オリジナルが多いですね。
そうですね、オリジナルがホント多いですね。原作を探すのが難しいくらい。
──やっぱり事件ものが⽬立って多い気がするんですが、何か理由があるんですか?
多分、韓国人は社会的な問題に興味があったり、政治的な問題に興味があったり、自分の意見を言ったりデ モに参加したり、ってことがあるから多分そういう映画にも共感を持つんだと思います。
『パラサイト』のポン・ジュノ監督の『殺人の追憶』も実際にあった事件ですし、その犯人が最近捕まりましたね。
──そうですよね、ビックリしました。ニュースに出ていて。もう 1 回観ました。
怖いですよね。
──漫画原作も最近多いんですか?
韓国では印刷されて発売するものよりも、ウェブ漫画がすごく人気なんです。向こうではウェブトゥーンって呼ばれているんですけど、ウェブトゥーン原作の作品も少しずつ出て来ました。
──「梨泰院クラス」も映画でなくドラマも漫画原作なんですね。
そうですね。
──『ミッドナイト・ランナー』っていうのも最近⽇本でリメイクされています。やっぱり韓国の映画やドラマは注目されているんだなぁって。
そうですよね。 オリジナルの力っていうのが韓国映画にあると思うから、日本でもそこに魅力を感じるのかもしれませんね。
──勉強になります。 えっと、好きな韓国料理はなんですか?
好きな韓国料理は、カムジャタン。
──カムジャタン!ジャガイモの?
大好き。カムジャタン食べたことありますか?
──あります。でも新⼤久保でしかないので、本場で食べてみたい。
最後にご飯混ぜて食べました?あれが美味しいんです。
──え?合うんですか?炭⽔化物、炭⽔化物ですけど。
最後に、その骨を食べた後に汁にご飯とキムチ、ごま油、韓国のりでチャーハンみたいにして食べる。それを食べるためにあの肉を食べるんです。
──あ、そうなんですか?

つぎ行ったらぜひ。
──そういう食べ方があったんですね。知らなかった。
新⼤久保⾏行っておばちゃんに、「パップ ピビョ ジュセヨ~∼(ご飯混ぜてください)」って、⾔ったら混ぜてくれますよ。
──今度、言ってみます。
美味しいですよ。好きな食べ物はなんですか?
──私は、新大久保に⾏くとチキンばっかり⾷べちゃうんです。こんな⼤きなチキンをサイダーで。
サイダーで?最近、ユーフォー何とかっていう、チーズの。
──日本ではチーズが流行ってるんですけど、韓国に行くとあんまりチーズがないな、って思って。
そうなんですよ。チーズタッカルビも韓国から来たっぽいけど、もちろん韓国でもチーズをトッピングしているお店はあったんですけど、そこまでブームってことでもなかった。
それを日本の、新大久保のお店が出したら日本⼈にウケてブームになって、逆輸⼊入みたいに韓国でも流行になり、チーズのトッピングはほぼ(どこでも)ありますね。
──ありますか?⽇本発信なんですね。
チーズはヤバいですね。チーズあったら何でも美味しい。
──ホントですか?一緒ですね。
好物の三つに入ってます。
──韓国に行ってみてフィーリングが合ったとおっしゃいましたが、何でそう感じたんですか?すね。(笑)
人の近さがすごく心地よかったんです。
──それは私もそう思います。
お酒、コンベー(乾杯)、ワンショット、もう飲んだら友だち。みたいなのが最初スゴく⼼地よくて。 日本だったら、ちょっとずつ配慮しながら、ちょっとずつ、やるのが⽇本の礼儀、だと思うのですけど、韓国じゃそんなの関係なく、パッと来て友だちになるみたいな。一杯飲んだら次は「よう!友だち」ってな感じが いいなって、最初感じましたね。
距離感が近いイメージは良い意味で、ですけど。男性同士でもヒョン(兄さん)って、やったりするのも、 日本ではあんまり無い。芸⼈さんとかはやりますけど、そういう近いイメージが凄くあって、いいなって思い ました。 私も韓国の友だちが何⼈かいるんですけど、やっぱり何かあったら助けてくれようとするし、それは日本の友 だちもそうですけど、温かいなって印象が。韓国に行って人が温かいなって凄く思いました。
ホント。留学行って最初ビックリしたのが、皆スキンシップをとる。握手も多いし、ハグも多い、女性同士 で手を繋いでる、とか。あと酔っ払ったオッサン同士が手を繋いで二次会に行くとか。(笑)
最初、え?って思ったけど皆んな純粋に⼈が好きなんだろうなって好印象でした。 こうしたらダメだ、ああしたらダメだ、じゃなくてただ純粋に人として表現してもいい世界っていうか。
──何で近いのにそんなに違うところがあるんですかね?日本と韓国と。似てるところもいっぱいありますけど、 そういうところが違うなって思います。
ですよね。大陸文化と島国文化の違いですかね?
──この間、六本⽊で韓国のカップルが喧嘩しているのを⾒ました。すごく怒鳴り合っていて、私がいつも見てる ドラマとか韓国語の悪口のセリフを⾔い合っていたので、感動してずっと⾒ちゃったんですけど。そういうと ころの感情表現が激しいイメージが凄くあって、⽇本だとちょっと抑えめ、な感じなので違うなって。
純粋に表現してナンボみたいな文化だし、隠さずに言いたいことを言える。褒めることも多いし、貶すとい うかしっかり注意してあげることも多いとですね。日本だと、これ言ったら傷つけるからダメだよな、ってので言わないけど、韓国は傷つくかもしれないけど、この人のためには⾔ってあげたほうが良いことはしっかり言うと思いますね。 例えば、オマエ臭いぞ、とか⾔うと思うし、おまえ歯直したほうがイイんじゃないか、とか。そういう(デリケ ートな)部分のこと⾔う⼈もいますね。日本じゃあちょっとあり得ないじゃないですか?
──言わないですね、思っていても。
そういう正直なところは、時にはトラブルになるかも知れないですけど、総合的に⾒たら良いかな、って思います。
──そうですね、最終的に仲が良くなりそうな気がしますね。
藤本さんの今後の目標をお聞かせください。
日韓合作とか日韓がらみの映画が、今はちょっと少なくなった印象がありますね。 やはり⽇韓関係とか、政治とか歴史的な問題が勃発すると、そういった作品も少なくなる印象がありますの で、そういうところで今後もちゃんと作れるような役割をしっかり出来たら良いなって。
やっぱり「⾃分は映画が好き」って言うのがマストですが、国際的な文化も大好きですし、人と人が繋がる接着剤的な役割を担っていきたいなって、それを映画でやりたいなって。 だからこうやって韓国で映画に出たいって人にもアドバイス出来るし、こういう機会が⾃分でもすごく嬉しい です。
絶対日本でも韓国映画はカッコいいなって、韓国映画の現場⾒て観たいなって⼈も絶対いると思うの で、そう思う人たちにも何かアドバイスできる機会があれば良いと思いますし、⾃分みたいに韓国に飛び込んで現場の仕事をする人がどんどん増えれば、どんどん日本の映画なんかの良い部分が交じる。そういうところができたら良いなって思います。
──今⽇は⾊々と藤本さんのお話を聞いて、やっぱり韓国映画に出たいなって思いました。
ぜひ。ホント頑張ってください。今日も帰ったら直ぐ勉強して毎日喋れる相⼿も探して。 あと短期で3ヶ⽉月の短期留学とかもいいと思います。
それも一つのきっかけになると思うのでその間に色んな人に会ったり、アピールしたりするのも重要かなって思います。
とりあえず自分を知ってもらう事が重要だと思うんでそれを実践してください。
──わかりました。 今日は、どうがんばれば良いのかも教えて頂いたので頑張りたいと思います。
楽しかったです!ありがとうございました。
【藤本信介さんプロフィール】
1979年金沢生まれ。2001年、富山大学在学中に韓国国民大学に交換留学生として留学。 留学中、韓国映画に魅了され、2003年に再び渡韓し韓国映画界に飛び込む。 その後、韓国映画・日韓合作映画の助監督として多数の映画製作に携わる。
参加した作品には『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)、『悲夢』(キム・ギドク監督)、『マイウェイ 12,000キロの真実』(カン・ジェギュ監督)、『裸足の夢』(キム・テギュン監督)、『蝶の眠り』(チョン・ジェウン監督)、『美しき野獣』(キム・ソンス監督)、『ノーボーイズ・ノークライ』(キム・ヨンナム監督)、『道〜白磁の人』(高橋伴明監督)、『アイアムアヒーロー』(佐藤信介監督)など。
また、韓国のケーブルTV「チャンネルW」の番組「今日の日本(오늘의 일본)」「アルバtalk talk(알바talk talk) 第1回目 第2回目 第3回目」に出演するなど様々な活動を行なっている。